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涙を流しているうちにどうやら眠ってしまっていました……
ゆっくりと体を起こすと、いつの間にか部屋の窓から見える景色が夜になっていました。
私はそっとベッドから起き上がると、目覚まし時計をチラリと見ました。
時刻は11時半……
私はさっきの事件を夢だと思いたかった。
だけどもすぐに夢じゃない事がわかりました。
着ていた服の裾に赤いシミのような物。
「夢じゃないの?」
私はそう小さく呟きました。
そう呟くと同時に涙が零れてきました。
私を庇ったせいで魔法が使えなくなったケイト……
そのせいで捨てられそうなケイト……
私は居ても立ってもいられなくなって、部屋から出ました。
夜なので暗く静かな廊下。
私はケイトの居る部屋へと足を進めます。
どうしても夢だという事にしたかったから。
ケイトの居る部屋の前まで来てゆっくりとドアノブを回しそっと中に入りました。
部屋の中央に置かれたベッドの上に上半身を包帯で巻かれたケイトが横たわっていいました。
「夢じゃないんだね……」
私はゆっくりとケイトに歩き近づきながら呟く。
ケイトの傍に近寄って私は壊れたように繰り返し続けました。
「ごめんね…ごめんね…」
そう言う度に涙が目から溢れてきて、涙で視界が見えなくなる……
「なか…ないで」
そう聞こえて慌てて涙を拭いケイトを見ると、ケイトは目を開いていた。
でも表情はどこか苦しそうだった。
「けがは…なかった?」
無理矢理微笑んだ表情で言う彼。
「なかったよ!なかったけど…ケイトが……」
「そっか、よかった…よかった」
そう言って笑いながら涙を流したケイト。
私はそんな彼に、泣きながら言う。
「良くないよ! ケイトは私のせいで…魔法がつかえなくなっちゃったんだよ? それにそんなに傷だらけに……」
「そうか……魔法使えなくなっちゃったのか
でも僕の魔法より……体より……アリスの方が大切だから
だから……笑って?ね?」
そう言ってケイトは涙を流したまま微笑んでいた。
私は涙を堪えて無理矢理笑顔を作った。
きっとこの時の笑顔は笑顔になってなかったと思う。
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