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「誰か居るの?」
と後ろから声がして私は振り向いた。 そこにはゆっくりとドアを開けて入ってくるケイトのお母さんの姿があった。
「ケイトのお母さん……」
私は慌てて涙を拭うと、ケイトのお母さんは見なかったことにしてくれたのか、笑みを浮かべながら声をかけてくれた。
「あら、アリスちゃん……
こんな時間にケイトのお見舞いかしら?」
でも、ふんわりと包まれるような声だったけれど、彼女の目と目の周りは真っ赤だった。
「お母さん……?」
ポツリとかすれる声でケイトは彼女の事を呼ぶと、彼女は目を見開きベッドに慌てたように近づく。
「ケイト? ケイト!? 目が覚めたの?
お医者様もしばらく目を覚まさないと言っていたのに……」
そう言って涙ながらにケイトに近づいて、そっとケイトの頬に手を触れる。
「心配かけてごめんね……」
ケイトはそう言って微笑んだ。
今にも目の前から消えてしまうんではないか?
そう感じるぐらい弱々しい声と微笑み。
ケイトのお母さんはそんなケイトの表情を見て……やさしく微笑み返していた。
そんな時またドアの方から声がかかる。
「ケイトは大丈夫か?」
ドアを静かに開けて入ってきたのはケイトのお父さん。
「お父さん……」
「ケイト!目が覚めたのか!心配したぞ?」
そう言って同じように目を見開いてから、ケイトが横たわるベッドへと近づいたケイトのお父さん。
「ケイト……良かった、本当に良かった」
ケイトが目を開けているのを確認すると、彼は安堵の表情を浮かべた。
私はそんな風に心配している2人を見て思う。
本当にケイトを捨てるのだろうか?と。
小さな私は一生懸命考えた。
だけども、小さかった私では答えなんて出なかった。
そんな時に突然声がかかった
「アリスちゃんも……心配で見に来てくれたのか?」
その声はケイトのお父さんの物だった。
「うん……」
「そうかそうか、ありがとうな……」
ケイトのお父さんは私の頭を軽く撫でながら微笑んだ。
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