91656人が本棚に入れています
本棚に追加
「ケイト…実はだな……」
ケイトのお父さんは眉間に皺を寄せて、悲しい表情を浮かべケイトに向きなおり言いました。
その言葉でケイトのお母さんも俯きました。
「僕が魔法を使えなくなったこと? アリスからさっき聞いたよ?」
ケイトは消え入りそうな声で言いました。
「すまない、ケイト。
私達がちゃんと目を離さなければ……」
ケイトのお父さんは頭を下げました。
「いいんだよ、父さん気にしないで?
僕は、アリスが無事ならそれでいいんだ」
弱々しい笑顔と共に言うケイト。
するとまたそっとドアが開く音がしました。
「病院と大型の馬車の手配がやっとできたぞ?」
そう言ってゆっくりと入ってきたのは私のお父さんとお母さんだった。
「すまないな、こんな時間まで……」
ケイトのお父さんが申し訳なさそうに言いました。
「気にしないでくれ、アリスを命がけで守ってくれたんだ……
これくらいじゃケイト君には借りは返せないよ」
お父さんは真剣な表情で言ました。
するとケイトのお父さんはそっとケイトを背負うと、ドアからゆっくりと出て行った。
その後をケイトのお母さん、お父さん、お母さんの順で部屋を出て行きました。
それに私はついて行った。
暗い廊下の中、ケイトの包帯だらけの背中が目に入りました。
私のせいで……
着ていた服をギュッと握り締めながら、私は零れそうになる涙を我慢する。
もう一度だけそんなケイトの背中を見てから、私はずっと俯き、皆の後について行きました。
最初のコメントを投稿しよう!