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私達は無言のまま家の出口へと着いた。
誰も言葉を発しませんでした。
私は顔を上げて家の出口を見えると、大きな馬車がそこには待機しています。
ケイトのお父さんはゆっくりとその馬車に乗り込んだ、ケイトのお母さんもそれに続いて乗り込みました。
「ありがとう……」
ケイトのお父さんが窓から顔を出して言います。
「いや、気にするな早く病院に」
お父さんが言うとケイトのお父さんが静かに頷きました。
それと同時に馬車がゆっくりと走り出します。
私はその馬車が見えなくなるまで見送りました。
馬車が米粒位の大きさになり見えなくなったときに私はお母さんとお父さんに言いました。
「私……絶対ケイトと結婚する」
「そう……」
「そうか……」
お母さんとお父さんはそれ以上何も言わずに頷いてくれました。
今度は私がケイトを守る番。
好きな、大切な人だから。
「今度は私が守るよ……」
私は見えなくなった馬車の方を見ながら誰に言うでもなく呟きました。
絶対に私が今度こそケイトを守るんだ、そう心の中で何度も呟きながら……
それから何が私達の親の間で話し合われたかは知りません。
だけど、婚約は流されませんでした。
何よりケイトは捨てられる事はありませんでした。
私にはこの事実だけで十分。
そう思っていると馬車の扉が開きました。
「おはよう、アリス」
そんな声と笑顔と共に姿を現したのはケイトでした。
「おはよう、ケイト」
私はいつも通り彼に挨拶を返しました。
ケイトが乗り込み馬車の扉を閉めると、ゆっくりと動き出します。
私達はいつものように雑談を始めました。
馬車はいつも通り学校へと進んで行きます。
そうすべてがいつも通りでした。
馬車に付いている車輪の様に私が知らない内に……
ケイトの運命の歯車はゆっくりと音を立てて動いているなんて、この時私は知るはずがありませんでした。
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