91656人が本棚に入れています
本棚に追加
アリスと僕が乗る馬車はゆっくりと減速をし始めると、学校の前へ止まった。
目の前には灰色のレンガが綺麗に積み上げられ作られたお城のような校舎、右側に広がるのはこちらは茶色のレンガで積み上げられた、外見はほとんど校舎と同じ寮、左側に広がるのは丸くドーム型をしている格闘場。
本当にこの学校は無駄に大きくて広いな~なんて思う。
まぁ生徒の7割は貴族だから、設備のよさはお金を躊躇う事無くここに注ぎ込んでいるから、というのが理由だと思う。
僕とアリスは1歩、また1歩と校舎に向けて他の生徒達に混ざって歩き出す。
すると、混じって歩いていた僕とアリスの目の前の人達が僕達に気がつき、冷たい視線をこちらに向けながら、まるで僕達を避けるように道が開いていく。
それと同時に聞こえてくる声。
「落ちこぼれめ……」
「貴族の恥さらし……」
本人達も僕に聞こえるようにわざと大きな声で言ってるのは知っている。
「ケイト、早くいきましょ?」
横を歩いていたアリスが無表情のまま、でも少しだけ眉をひそめていることからあんまり気分が良いとは言えないことがわかる。
「うん、そうだね」
そんな彼女に僕は笑顔で返した。
僕はアリスが居なかったらきっと、こんな中に居れなかったと思う。
本当にアリスには感謝。
そう思いながらそんな視線の中を抜けていった。
そんな僕とアリスを見ている人達の中で……
また違う意味で視線を集めている人達がこちらに向けている視線に、僕はこの時気がつかなかった。
まさか、この時に運命の歯車が急速に音を立て動き始めたなんて……
この時の僕には知る術なんてなかったんだから。
最初のコメントを投稿しよう!