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アリスの家の隣にある森の中。
僕達はそこで鬼ごっこをしていた。
長い金髪を揺らして逃げるアリスを追いかけて森へと入っていく僕。
もしこの時森に入っていなかったら……
大きく人生は変わっていたかもしれない。
森の中へとドンドンと進んで行くアリスを追いかけているとアリスが急に立ち止まった。
どうしたんだろう?僕はそう思いながら彼女の所まで行くと目の前に居たのは、角の生えた魔族と呼ばれる僕らとは種族が違う人。
人間と殆ど同じ姿形だけど魔族は角を額に持っていて、人間にはない瞳の色。
赤い瞳を持っていることが知られている。
何でこんなところに?
そう思いながらアリスの元へと僕は走った。
魔族特有の赤い瞳がアリスを捕らえていた。
口元に浮かべる不気味な笑み、そのせいか彼女は軽く身体をビクビクと震わせて動けずに居た。
「まさか人間に見つかるとはな……
まぁ仕方あるまい、まだ子供だからな楽に殺してやる」
魔族は腰にしていた剣に手をかける。
森の木々から降り注ぐ光を浴びて、不気味に鈍く光る剣を鞘から抜き、アリスを切ろう剣を振り上げた。
僕はとっさに魔族とアリスの間に走りこみ、アリスを庇う様に魔族に背中を向けてアリスを抱きしめる。
ヒュと音を立てて振り下ろされる剣。
それと同時に背中に広がるジリジリとした痛み……
「ぐああああ!!!」
僕はその痛みに耐え切れなくて悲鳴を上げた。
僕は痛みで気を失いそうだったけど、持ちこたえて魔族を睨んだ。
「ほほう少年、いい目をしているな…
そんなにその少女が大切か?」
僕の血を剣から払い落としながらこちらを見て言う魔族。
その表情は当時の僕でも分かるぐらいに、狂気に満ちて居た。
「大切だ……」
僕は魔族を睨みつけたまま言う。
アリスは僕の腕の中で震えていた。
「大丈夫だからね、僕が守るから」
そう言って僕は無理矢理笑顔を作ってアリスに笑いかけた。
痛む背中の傷を彼女に心配させまいと必死に作った笑顔。
でも彼女は恐怖のせいか頷くだけだった。
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