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「気が変わった!ゲームをしないか?少年よ」
魔族が狂気に満ちた赤い瞳を吊り上げ、不気味な笑みを顔に貼り付けて僕を見ながら言う。
「ゲーム?」
背中の痛みに耐えながら僕は魔族に問いかける。
少しでも気を抜いたら、痛みで涙が零れそうだった。
「そうだゲームだ。今からお前に3回攻撃する。
もしそれに気絶せずに耐え切れたら、2人の命を助けてやろう。
もし耐え切れなかったら2人とも殺す。
ああ、安心しろ?
3回の攻撃の間にお前の命はとらないからな。
後、手足を切り落としたりもしない……どうだ?やるか?」
魔族は持っていた剣を指でそっとなぞりながら、そう言った。
アリスを助けたい!
そう思っていた僕はこのゲームに乗った。
そして僕が決心して、小さく頷いた瞬間だった。
「それじゃあ1回目だ」
「ぐあああああ!!!」
魔族は容赦なく左肩を突き刺し、素早く引き抜いた。
先程とは比べ物にならない痛み、そして多分生暖かい自分の血が背中を伝う。
痛い、痛みで意識が飛びそうだったけどアリスの事を思い浮かべて、意識を繋ぎ止める。
「ケイト?!ケイト!?」
僕の名前を腕の中で震えながら叫ぶアリス。
そんな彼女に僕は少しでも安心して欲しくて……
「大丈夫……大丈夫だよ」
と無理に作った笑顔で笑いかける。
大丈夫、アリスを護るんだから、小さくたって僕は男なんだから……
お父さんがよく言っていた、男は騎士、女は姫様だと言う言葉が頭を過ぎった。
「ほう…少年よ耐えたか、じゃあ2回目だ」
「ぐあああああ!!!」
感心したような声が聞こえたと思った瞬間に、今度は右肩を突き刺して来た。
切られた背中、突き刺された両肩から血が溢れ出る。
ここで気絶したらアリスが死んじゃう!!
ただそれだけを思いながら僕は2回目の攻撃にも耐えた。
痛みで朦朧とする意識の中アリスに言う。
「大丈夫だよ…大丈夫だよ…」
「ケイト!ケイト!」
少しでもアリスに安心して欲しくて、口を無理矢理開くようにして紡いだ言葉に、アリスは泣きじゃくりながら僕の名前を呼ぶだけだった。
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