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意識が朦朧としてる中で、心の中で僕は呟き続けた。
アリスは僕が護るんだ、アリスは僕が護るんだと。
「くっくっく……はははは!!!
2回目の攻撃も耐えるか少年よ!
次で最後だ少年よ!」
「ぐあああああ!!!」
そう言って背中からお腹に掛けて突き刺された。
朦朧としていた意識が一瞬だけ、痛みで現実へと引き戻されて、痛みに耐え切れなくなった身体が今度は意識を手放そうとする。
意識は絶対失わない。
アリスは僕が護るんだ!
自分の好きな人ぐらい自分で護るんだ。
手放しそうな意識を、自分にそう言い聞かせながら、必死に耐えるけど流石に限界で……
「ケイト!!!!」
とアリスは泣き叫ぶ声が僕の耳へと届く。
まだ、まだ僕は意識を手放しちゃいけないんだ。
まだアリスを、護れてないんだから。
その言葉を聞いて、僕はまだ限界じゃないと心に言い聞かせた。
「大丈夫…大丈夫だから笑って…アリス……」
最後の力を振り絞りながらアリスに微笑みかける。
少しでも彼女に安心して欲しくて……
背中とお腹を刺されたのに口からは血の味がする。
独特なあの温い、鉄の味がじんわりと口の中に広がってくる。
「ぶはははは!!! 耐えたか少年よ! 約束は守ろう!
お前に敬意を表してな……
だがお前はこの先絶望するだろうな!
何せお前はもう魔法を使えないのだからな」
そう言って魔族は僕の血の着いた剣から一振りして血を払うと、剣を鞘に入れて笑いながら、森の奥へと消えていった。
僕は朦朧とする意識の中でそれを見ていた。
魔族の姿が見えなくなったのを確認して、僕はゆっくりと意識を手放した。
意識を失う寸前に
「ケイト? ケイト!!」
とお父さんの声がした。
そんな声に僕は、少しだけ安心しながら……
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