ブラッディー・ダンス<後編>

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「ケイトは今度の模擬戦どうするの?」  キイトが少し話題を変えるように僕に尋ねてきた。 1週間後に行われる、魔族の学校に通う者達の間で学科関係なく模擬戦を行う行事。 僕も参加しようと思ったのだけれど、万が一のことがあったら俺が殺されるからやめてくれとポルペ先生に言われて辞退。  ちょっと出てみたかった気持ちもあるけれど、まだまだ対魔族用の魔法技術がないため身体強化術で一気に勝負をかけるしか今の僕には手持ちの札がない。 つまり怪我は必須。でも魔族の治療魔法なら相当な怪我じゃない限り治せると思う。 「でも、魔族の魔法威力も高いから相当な怪我になる確率が高いよ?」  キイトは苦笑いを浮かべながら僕へとそう呟くように言う。 「あ、確かに」  僕はそう呟き返しながら笑みを浮かべる。 人間とは比べ物にならない魔法の威力。そんな中でキイトは人間より少し良いくらいの魔力で戦わなくちゃいけない。 「実はね僕の模擬戦の相手、天才って呼ばれてる人なんだ」 「天才……」 「そうだから、無理だなって思ってたんだ。 リミッター外しっていう大きな武器は手に入れたけれど、天才に僕は到底届かないだろうってね」  キイトは軽く自嘲の笑みを1度浮かべた後、でもと力強く言葉を続ける。 「でも魔王様が言ってくれた。 今のそなたは他の者から見れば天才なのだ、自信を持てって。 だから、頑張ってみるよ」  キイトはゆっくりと笑みを作ると、ゆっくりと握りこぶしを作った。 「でもリミッター外しの1段階上は使えなさそうだね」 「使ってみなきゃ分からない、もしかしたら副作用がないかもしれない」  キイトに僕はそんな言葉を投げかける。 するとキイトは一瞬固まった後ゆっくりと口を開いた。 「どういうこと?」 「キイトはリミッター外しの副作用がない。だからもしかしたら、もう1段階上のリミッター外しを使っても大丈夫な可能性があるかもしれない。 でもガルトスが筋肉が耐えられないって言うなら、多分それが正しいのだろうけど」  僕は無責任なことを言ってるなと苦笑いを浮かべながら、そんな言葉を口にする。
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