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「ぶはっ!!」  はぁはぁ……と僕の荒い息遣いが部屋に響く。 じっとりと汗が滲んだパジャマが身体に纏わりつく。 久しぶりに見たあの時の夢。 魔族に襲われたのは今からちょうど12年前の今日、5歳の時だった。  ベットから起き上がり、すぐに部屋に備え付けられているシャワーを浴びる。 少しでも身体に纏わりつく、嫌な汗を流したくて、すぐさま僕はシャワーのハンドルを回した。 冷たい水が、纏わりつく変な温度を持った汗を流していってくれる。 「冷たくて気持ちいいな」  僕はそう呟きながら、手で身体を擦る。 腰の辺りを、手で擦ったときに、盛り上がった少しだけ他の皮膚とは違う感触の所に指先が触れた。 あの時の傷痕は僕の体に未だに残っている。 右肩から左腰にかけて切られた傷痕。 そして両肩、背骨の右近くにある刺された傷痕。 あの時の事を僕は鮮明に覚えている。 腰を刺された時の込み上げた血の味、そしてあの痛み…… でもあの痛みに耐えたおかげで、僕とアリスは助かった。 好きな人を守った勲章。 誇りにできる傷痕。  でも、命の代わりに魔族が殺した物があった。 それは僕の魔力回路と源。 魔力回路というのは、魔法を使う時にこれに魔力を通して右手や左足に魔力を移動させる。 魔法使う特有の神経と思ってくれると分かりやすいかな?  そんな魔力の源は腹部にある。 3回の攻撃で殺した物、それが僕の魔力回路と源だった。  お医者さんによると、僕の魔力回路と源は完璧に壊されていた。 別に無くても命に別状は無い。でも……『魔法が使えなくなる』。 そう魔族は僕の魔法という名の能力を潰したのだ。
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