厳しいあなた

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お疲れ様でしたぁ、と前を通るだけ。さっきまで一緒に働いていたんだ。挨拶くらいちゃんとしなきゃ。 なのにちょっとためらう。でもレジの前を通らなきゃ帰れない。 なるべく物音立てずに、静かに帰ろう。レジの前にいないで 隙間からそっとレジを覗くと、びっくり。いない よっしゃラッキー 携帯を片手に出た 「おい」 びくっ、とした だって後ろから声したらそりゃ 振り向かないわけにはいかない 「…はい?」 「これ」 振り向くと同時に投げられた。見事にキャッチ。 見ると、可愛いカエルの人形。笑っている。 「新商品の付録」 見上げたあたしの顔は確かに熱かった。 「頑張ったな」 笑顔、 お疲れさん、と言われて彼はまたお客さんの来ないこのコンビニの品だしを始める。 「あ、あの」 胸も熱い、喉も熱い、 全部、全部熱い 「名前、を、教えてください」 振り向いた顔はまだ口元が緩んでた -fin-
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