強いあなた

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知子(ともこ)の結婚式は特に派手じゃなく、でもそこそこ人が集まった。こじんまりと言えばそうだし豪華だったと言えば納得できなくもない。 知子らしい、曖昧なものだった。 「おめでとう」 たくさんの人に祝福された花嫁。旦那になる男は心も体も大きな、笑顔が絶えない人。 私は何回おめでとうって言ったんだろう。 いつもはっきりしない知子がこうもあっさり結婚するなんて。 私を置いてくなんて。 「綺麗なドレスねぇ~」 「乾杯だな乾杯!」 「俺がスピーチしてやろうか!?」 「っつーかキスしろよ!」 拍手も喝采もここにいる人間は今日という日だけ。ただあの幸せな二人には永遠に残るんだろう。確信してる。あの2人は別れない。 困りながらも周りの声に逐一反応する夫婦は式が終わるまで、みんなの恰好の餌になっていた。 私はただ、ただ遠くから見ていた。
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