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「おそく、ない…?」
そう、と優しく言う
「あんたみたいの何人見てきたと思ってんのよ。ここはね、香苗ちゃんみたいな女ばっかりなんだから」
女、というところがやけに強調されたのは気のせいか
結局あたしは鉄ママを傷つけにきただけなのかも知れない
「顔あげて、ほら」
上げないでいたら無理矢理両頬を掴まれた。普通に男の力だ
「…可愛いんだからさ、あんたは」
誰にでも、私みたいな女に言ってるんでしょ
って、分かってるのになぜか言えない。
ほら、立って。店閉めるから
と促され外に出るともうタクシーがきてドアを開けていた。
帰らなきゃいけない合図
そうだ、あたしは
「鉄ママ、ごめん」
「…何が?」
「あたし、傷付けたよね」
「いつでも傷付けにいらっしゃい。香苗ちゃんは自覚してるから好きよ」
何から何まで勝てない
やはり彼女は女以上に女だ
涙で化粧がぐちゃぐちゃ
「またくるね」
東京の夜はまだこれからだ
-fin-
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