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学校を出た俺達は、相変わらず泣き付いてくるユイをはぐらかしながら、早足で彼女の家を目指していた。
春の昼下がりと言えど、日差しの中を早足で歩くと思ったより暑い。軽く汗をかきながら歩く、うん、健康の証だな。
もっとも、ユイが流しているのは冷や汗なんだろうけど。
「ね、ね……ホントにいかなきゃダメ……?」
一縷の望み、と言った感じでユイが口を開く。それを聞いて、全員がほぼ同時にニッコリとユイに微笑む。
「うぅう……」
みんなの顔を見て悟ったか、ユイは黙りこくってしまった。全く……仕方ない、少しフォローしてやるか。
「ま、仕方ないって。たまにはこういう事もあるもんだし……知られたくないことだったら秘密にしてやるしさ。な?」
そう言ってユイの方を向いたが、どうやら全く聞こえていないみたいだ……ずっと下を向いてぶつぶつ言っている。うーん……こりゃ困ったな。そのうちキレて何かしでかすかもしれない……
そんなこんなで歩いているうちに、ユイの家についた。久しぶりに見たユイの家は、半年前と何も変わらなかった。まぁ、そりゃ当たり前か。
「ふー、ついたな。じゃあ早速……」
「あ あのさ!」
後ろで黙りこくっていたユイが急にしゃべりだす。
「今お客さん来てるかもしんないんだ!だからちょっと聞いてくるからさ……ここで待って……」
ガラガラッ。
扉が開き、中からユイのお母さんが出て来た。
「あ、こんにちはー」
「あら拓弥くんにみんな……こんにちは、いらっしゃい」
皆それぞれに挨拶をする。それに答えるように、挨拶がかえってくる。
なんでもない状況なのだが、ユイがいきなり気まずい顔をしている。
「皆揃ってウチに来るなんて珍しいわねぇ。結衣香、今日はウチで遊ぶの?」
「あ、いや……んっと……」
なんだかモゴモゴしてるな……そういやお客がいるとか言ってなかったっけ?そんな事を考えていると、ほのかちゃんが笑顔で話し始めた。
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