~ハジマリノユメ~

12/21
前へ
/44ページ
次へ
「すみません、ご迷惑でなければお邪魔させて頂きたいのですが……?」 「あらあら相変わらずしっかりしてるのねぇほのかちゃんは。どうぞゆっくりしていってね、今日は何も用事ないから」  ……用事はない?……つまりお客はいない……あぁ成る程、そういうことね。ユイの最後の作戦はいきなり潰れたわけだ。さっきからぶつぶつ言ってたのは、これ考えてたからか? 「じゃあおじゃましまーす」 「お邪魔します」  それぞれ玄関で靴を脱いで上がるのとすれ違いに、ユイのお母さんが外に出る。さっきゴミ袋みたいなのを持ってたから捨てにいくんだろう。  靴を揃えていると、ユイがまたも慌ただしく話し始めた。 「あのさ、あのさ、今私の部屋汚いんだよね!掃除するの忘れちゃって……」  まだ言い訳してるよ……よくもまぁあれこれ思い付くもんだ。だけどここまできたらこっちだって引き下がれないぞ。 「気にすんなよ、俺の部屋だっていつも散らかってるし」 「うんうん、タクの部屋はホント汚いよな。いついっても足の踏み場『が』ないよな」 「ひでぇなオイ……ま、そーゆーことだから気にすんなよユイ」 「だ、ダメダメ!ホラその……パンツとかブラとか散らかってるから!」 「へぇ……それは俺大歓迎だぞ、ユイちゃん!」 「ダメだって!入ったら殺すかんね!!」 「つーかユイ、お前ブラとかしてんの?sizeあったのか」 「そうそうあたしの場合小さすぎて逆にサイズが……ってノらすな!!てゆーか何でサイズだけ発音いいんだよ!!てゆーかブラぐらいしてるっての!!」 「それじゃ私と一緒に片付けましょうか。二人ならすぐ終わるでしょ?」 「いや、えっと……とにかくそれもダメなんだってば!」  なんだか段々可哀相に見えてきたな……もう折れてやろうかなぁ……どうしても見られたくないんだろうか……  そんな空気が俺達3人の間に漂い始めたまさにその時、後ろから聞き覚えのある声がした。 「あー結衣香ー?今日部屋掃除しといたからねー。ちゃんと場所は変えてないから安心しなさーい」 「……」 「………」 「…………」  ……こりゃ俺でもどうにもできないな……みんな同じような顔してるし……ユイは……  ……なんか呆然としてるよ……  結局どうしようもなくなった俺達は、みんなで仲良くユイの部屋まで向かう事にした。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加