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どうにもならない空気になった俺達は、無言のまま階段を上ってユイの部屋の前についた。
「……」
ドアノブに手をかけたユイが無言で振り返る。俺達も無言で頷く。
はぁ、と溜息をついたユイが吹っ切れたように喋りだした。
「……わかったよ!見ればいいでしょ見れば!!」
そう叫びながらユイがドアを開く。そして俺達の目に飛び込んで来た光景は……!
…人形?
部屋のあちらこちらに人形が……いや、ヌイグルミが飾られている。ピンク色のブタだったり、青いイルカだったり……すごいな、一人で抱えきれるか判らないくらい大きなクマさんもいる……おっと、窓際にはネコが沢山並んでるぞ……
驚きを隠せないのは俺だけじゃないらしく、カズやほのかちゃんも目を丸くしている。
確かに、普通ならなんてことない部屋なんだけど……これがユイの部屋だから驚きを隠せない。ユイが人形の話なんかしてるところは聞いたことがないし、「あの○○かわい~!」なんて反応も見たことがない。第一、半年前に来た時はこんな部屋じゃなかったし……
「……ッこれがあたしの部屋!どう、びっくりしたでしょ!笑うなら今のうちに笑ってよね、後でイジるの禁止だかんね!!ほーら笑いなさいな!ホラホラ!」
関を切ったようにユイが喋る。顔は真っ赤、目は潤み気味、引きつった笑顔。もうヤケクソだって感じがひしひしと伝わってくる。気持ちは解るけどな……でも、俺は……
取りあえず他の2人は何言えばいいかわかんないって顔してるし、ここは俺がフォローしてやるか。
「……まぁビックリすることはしたけど……別にいいんじゃねーの?なぁ?」
「へ、へっ?」
「そうよね……別に部屋としてはおかしくはないと思うけど……?」
「だよな。ちょっと数が多くてびびったけど……ぬいぐるみくらいあったって不思議じゃないだろ」
「え、あの……わ 笑わないの……?」
ユイがおどおどしながら聞く。手はスカートを握ったまま離さない。そんなに不安だったのか、この状況。
「別に笑わねえよ、こんな事で……それより疲れたからなんか飲み物くれよ。座って待ってるからさ」
「あ、うん……持ってくる……」
パタパタとスリッパの音を鳴らしながら、ユイが飲み物を取りに行く。ふぅ、と一息付いて俺達は床に座った。
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