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「んーっ……!今日もいい天気だなぁ……」
ベッドから下りて、窓のカーテンをシャッと開ける。いつもどおり、眩しい朝の日差しが部屋一杯に注ぎ込む。
皐月晴れとはよく言ったもんで、綺麗な空がそれを再確認させてくれる。同時に、俺がこの日差しが大好きだという事も。
「タクヤー、早く起きて朝御飯食べちゃいなさーい!」
「もう起きてるよー、いまいくー!」
いつも通りの会話。そしていつも通りの朝食。
白いごはんに味噌汁、シャケの切り身に玉子焼き。テーブルの真ん中にはレタスのサラダ。
……完璧だ。我が母ながら、感心する。俺は朝食といえばこのセット、と思い込んでる。物心ついた頃から毎日これを食べてる訳だから、かれこれ10年以上はずっとこの完璧な朝食を作り続けているんだろう。母親ってのは偉大だな。
シャケを半分程食べたところで、ピンポーン、とチャイムが鳴る。
「ほらほら、お迎えがきたわよ!」
「わーかってるって。いつもいつもはえーなぁ全く……」
ぶつくさと文句を垂らしながらインターホンに出る。
「はいはい……いつもゴクロー様です、ユイカ殿」
『おっ!今日は起きてるの?珍しい事もあったもんだ!』
「うるさいなぁ…朝一からガキみたいにハシャぐなよ」
『ガキなのはタクの息子さんじゃないのぉ?どう?今日の朝は元気だった?』
下品極まりない。こいつはホントに年頃の女なのか?時代が時代だったら白い目で見られてるんだろう。
「お前女の癖によくそんな下ネタ言えるな……嫁の貰い手なくなるぞ?」
『うーん……?ま、その時はタクのお嫁になってあげるからさ、喜びなよ!』
おいおい……俺の選ぶ権利はどこいったんだ?
そう続けようとしたところで時間に気付き、慌てて支度に入る。
忘れ物は……うん、ないな。
「いってきまーす!」
「気を付けてねー!」
「あいよー!」
靴を履き、ドアを開ける。と同時に、暖かな春の風を感じた。
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