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「いよっ!おっはよーう!」
開けたドアの向こうから見慣れた顔が現れる。いつも通りに長めの髪を先の方で束ねて、メガネを……あれ、今日は……
「おーす。どしたー、昨日までと眼鏡違うんじゃね?」
「おっ!細かいトコロに気がつくじゃないのー!今のは好感度アップだよー?」
成程。こういう事で女子の好感度って上がるのか。いい事聞いたな。
「毎日目にしてりゃイヤでも気付くっての。しかし下淵フレームだけとか……洒落ちゃってまぁ……」
「ま、あたしも年頃の乙女だからねぇ……あ!そうか!」
「な、なんだよ急に……」
にまーっと嫌な笑みが彼女の顔を包む。
「つまりこういう事か!幼なじみのユイちゃんがお洒落しちゃって、男が出来たんじゃないかと心配な訳だ!ったく、素直にそう言えばいいのに!大好きなかわい~いユイちゃんが……」
「……先いくぞ」
「ちょっと!何か言ってから行きなよ!」
朝っぱらから人の横で喜怒哀楽を力いっぱい表現……ホント元気なヤツだな。
こいつは俺の幼なじみで白浜結衣香(シラハマユイカ)。島の中学に通う幼なじみだ。中学からは島から出るなんて言っていたのに、結局同じときた。何か渦巻く物を感じるな……
相変わらずぎゃーぎゃーとうるさいメガネを横目にあくびをしながら、あぜ道の上を学校に向かって足を進める。ほのかに、花の香りがした。
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