~ハジマリノユメ~

9/21
前へ
/44ページ
次へ
「みんな……よく思い出してくれ」  3人は俺の言葉に不思議そうな顔をしながら耳を傾ける。 「みんな……最近、ユイの部屋行ってなくないか?」 「あ、あたしの部屋あ!?」  ユイが目を一層丸くする。俺達は暇な時間を過ごす時、お互いの部屋に行く事が多い。  勿論釣りをしたり海で遊ぶ事も多いのだが、冬に大雪が降ってあまり出られない時や、ダラダラしたい時なんかは部屋で皆してゴロゴロしたりもする。  しかもそれぞれ用途が違い、俺の部屋は漫画を読みにきたりする時。カズの部屋は音楽を聞いたりする時。ほのかちゃんの部屋は彼女の趣味であるジグソーパズルをやる時……といったようになっている。  で、ユイの部屋は……というと、昔オママゴトをやった記憶や、半年前くらいに部屋の前で1時間も待たされた揚句、30分くらい中で喋ったくらいだ。 「そういえば……しばらく見てないわねぇユイの部屋……」 「言われてみればそうだよなぁ……うん、久しぶりだ。」  よし、上手い具合に二人とも食いついてくれたぞ。後は言い訳を押し退けるだけか……よし、俺の力の見せ所だな。 「あ、あたしの部屋はダメだって!絶対ダメ!」 「なんでだよ?いつも皆の部屋使ってるんだからさ、たまにはいいだろ?」 「ほ、ホラ麻雀は集会場じゃないとできないでしょ?ね?」 「何言ってんだ、わざわざいつも自転車でマットと牌持ってくるのお前じゃないか。」 「あ……いやほらその……そう線香!家線香臭いからさ!じいちゃんがいつもやるし!」 「別に線香くらい慣れてるぞ。それに集会場の方が臭いだろ」 「いやでもほら、その……」  すごい慌てようだな……そんなに部屋に入れたくないのか?こりゃますます気になるな。 「んー、なんかその慌てっぷりも気になるな……ねぇほのちゃん?」 「そうね……私もカズくんと同じ意見。今日はユイの部屋で麻雀、って事でいいんじゃないかしら?」 「うぇう、ほ、ほのかまでぇ~……」  二人も同じ意見みたいだな。納得しながらユイの方を見ると、八方塞がりになったという感じが見て取れた。これで決まりだな。 「わ、わかったよ……じゃあみんな着替えたらウチきなよ……」  ふっ……今日の俺は一味違うな。今のセリフの違和感、ここまで気付くとは……!
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加