12人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
聡はふと気がつくと、昔、兄とよく野球をしていた、河川敷に寝転んでいた。
「……あれ、俺、さっきまで庭で素振りしてなかったっけ?」
「…聡、こんなところに居たのか、風邪ひくぞ。」
「……えっ?」
名前を呼ばれ、ふっと顔を上げると、兄が聡の顔を覗きこんでいた。
「…に、兄さん!!」
「なんだよ、死人が生き返ったように驚いた顔しやがって」
「…だ、だって」
「それより、今日のことは気にするなよ。」
「…え?」
「今日、少年野球の監督さんに言われたことだよ。兄ちゃんは何度も言ってるだろ?『俺は俺、聡は聡。それに聡のほうが才能あります!』ってさ」
「…あ、うん。」
「みんな気づいてないんだよ、聡の才能にさ」
「……そんなことないよ、俺、全然打てないし、いつまで経っても、何年経っても、兄さんには、追いつけないよ!」
聡がそう叫ぶと、兄は聡の隣に寝転がる
「そんなことないよ、聡はまだ身体ができてないし、あと打つとき、体が前に出ちゃってるから、手打ちになってるんだよ。バッティングフォームを改善すれば、一気に四番だ!」
「……そうかな」
「そうだ!兄ちゃんが保証してやる!それと、あまり兄ちゃんに固執するなよな!」
「だって…」
「今の聡のバッティングフォーム、兄ちゃんのコピーだろ!聡には聡のバッティングフォームがあるんだから、無理に兄ちゃんのフォームにしようとしなくていいんだぞ。」
「……うん。」
「聡は兄ちゃんのコピーじゃないんだからさ。……ごめんな、兄ちゃんのせいで、こんなことになって」
最初のコメントを投稿しよう!