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最後の1つは、邦昭が来た時に食べ頃になるように、時間を計算して作ったお菓子だった。
生チョコのタルト。
今まで、邦昭と潤子には何度もお菓子を作ってあげたけど、タルトだけは作ってあげなかった。
タルトは、私にとって特別だから。
「お菓子を作り始めたきっかけが、タルトだったからなぁ」
小学校4年生の時、近所に住んでた男の子にお菓子を貰ったのがタルトだった。それは、コンビニで売ってる100円くらいのやつだったけど、その子が美味しそうに食べてたのが心に残った。
私も、貰ったタルトを美味しく食べた。
「もし、自分で作れたら」
それを親戚の人が聞いていて、お菓子作りを教えてくれた。
その親戚の人のお陰で、この店で働けてるんだけど。
それがいつからか、タルトだけは一番好きな人にだけ作ろうって、そんな特別なお菓子になっていた。
「こんな時に、作る事になるなんて……」
その時、お店の裏口でドアをノックする音がした。
約束の時間は、とっくに過ぎてた。
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