始まりは……

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   バレンタインのチョコを渡した日も、邦昭の部屋に行っていつも通りに過ごすんだと思っていた。  だけど、私の人生を変えちゃう事件が起きた。  潤子の提案で、邦昭の部屋に行く事になって帰り支度をしてたら、潤子がトイレに行くと言って先に教室を出た。  二人っきりで、ちょっと気まずかった。 「なぁ、樹里」 「ん、なぁに?」 「樹里のチョコ、すげぇ美味かった」 「そっ、ありがと」  素っ気なく言ったけど、内心ではドキドキしてた。  邦昭は普段、私のお菓子を食べたって感想なんて言わないし、無表情だから美味しいのか不味いのか気になってた。  その分、潤子が派手なリアクションをしてくれるけど。  そんな邦昭が、美味しいって言ってくれた。 「樹里はさ、パティシエを目指してるんだろ?」 「そんな、プロになんてなれないよ」 「そうかなぁ、樹里ならなれると思うんだけどなぁ。そこらの店のより、樹里が作ったやつのが美味いのに」  何の狙いも無い、自然な言葉だった。
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