101人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
バレンタインのチョコを渡した日も、邦昭の部屋に行っていつも通りに過ごすんだと思っていた。
だけど、私の人生を変えちゃう事件が起きた。
潤子の提案で、邦昭の部屋に行く事になって帰り支度をしてたら、潤子がトイレに行くと言って先に教室を出た。
二人っきりで、ちょっと気まずかった。
「なぁ、樹里」
「ん、なぁに?」
「樹里のチョコ、すげぇ美味かった」
「そっ、ありがと」
素っ気なく言ったけど、内心ではドキドキしてた。
邦昭は普段、私のお菓子を食べたって感想なんて言わないし、無表情だから美味しいのか不味いのか気になってた。
その分、潤子が派手なリアクションをしてくれるけど。
そんな邦昭が、美味しいって言ってくれた。
「樹里はさ、パティシエを目指してるんだろ?」
「そんな、プロになんてなれないよ」
「そうかなぁ、樹里ならなれると思うんだけどなぁ。そこらの店のより、樹里が作ったやつのが美味いのに」
何の狙いも無い、自然な言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!