背負うもの(源→佐久→鬼?)

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 「よし、今日の練習は終わりにしよう。各々しっかり身体の筋を解してから部室に戻ること」 「お疲れっしたー」 帝国学園ではすでに今の時期からフットボールフロンティアに向けての練習が行われていた。世界は今、インターナショナルに向けて進んでいるが余所は余所、家は家と完全に割り切っている。 今もこうして厳しい部活が終了し、源田の指示の下で皆ストレッチなりなんなりしていた。ただ一人、佐久間次郎を除く。  ただひたすら、一心にゴールへシュートを繰り返す。何度も何度も、汗に張り付く前髪をかきあげる以外に彼の足が止まることはない。シュート練習が終わればドリブルを含めた走り込み、次に必殺技の練習、少しの休憩を挟みまた最初からメニューをこなす。誰もが源田の指示に従う中、彼だけは別に行動していた。  その見ていて痛々しくもある光景を、源田は止めようとしなかった。部員が幾度となく源田に問いかけたが彼は苦笑いをこぼすか、はたまたうやむやに誤魔化すかしない。痺れを切らした辺見が直接佐久間に言いに向かうも少し言い合いをした後すごすごと帰ってくる始末だった。それでも源田は苦笑いを浮かべるばかりだ。 「源田、お前いつから知ってた」 「んん…最初から、だな」 「?何がッスか、辺見先輩」 「てめえは知らなくていいんだよ」 源田の反応につまらなさそうに眉をひそめた辺見だが、ため息をつくとそのまま成神を引きずって部室まで去った。閑散としたフィールドに残るは源田と佐久間のみ。源田は水分を取りながらじっと佐久間を見つめ、つい先日のことを思い返していた。  "代表チームは試合ごとに入れ替え可能"。つまり、今回チームに外れたからといって代表を諦める必要はない。響木監督からそれを聞いている時、源田がたまたま近くを通りかかった。皆で帰ろうと佐久間を探していたが、話を聞いては咄嗟の判断で物陰に隠れてしまった。今さら外に出にくいまま、話が終わるのを待つ。 他の代表落ち、染岡や松野たちが各々目標を持って去る中、学校が違うこともあり佐久間は最後尾を歩いていた。俯きながらどこか寂しく歩く佐久間に思わず声をかけることすら戸惑う。
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