青い蓋の内側に

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 眞子は昨夜の出来事が気になってなかなか寝付くことが出来なかったせいで、起きるのがこんな時間になってしまったのだ。 「んー、まだ眠いなー」  半分布団をかぶったまま上半身を起こして辺りを見渡す、カーテンの外は意外と明るい。梅雨にも関わらず今日も晴れたようだ。  今日は従姉妹と買物に行く約束をしている。たしか待ち合わせは五時だから、待ち合わせ場所に行くまでの時間と支度の手間を考えればそろそろ起きなければマズイ。  高校生の従姉妹は基本的におおらかな性格だが遅刻にはうるさい。眞子はどうにか二度寝の誘惑をはねのけて、のろのろと支度を始めた。  やがて部屋を出た眞子がマンションを出て最初に確認したのは《あのバッグ》の有無だ。 マンション横のゴミ置場はすっかり空っぽになっていた。バッグはおろか、ビニール袋一つ落ちていない。 「なーんだ、やっぱり持って行ったんだ」  恐怖心も消え、原因となる奇妙な代物も消えた。  何か忘れているような気もするが、約束の時間が迫っていたので眞子はそれを頭の中から追い出し、駅に向かって歩き出した。 ※※※※※※※※※※※※※ 「ああ、1508号室の中山さん?その人なら一年位前に引っ越したよ」 「引っ越した?」 「うん、なんでも一人娘が行方不明になって死亡あつかいになったからって……ここは娘の思い出が残ってるから辛いって言ってね。たしか噂ではダンナとも離婚したとかなんとか、離婚といえば、602号室と903号室の夫婦も離婚した~~~~~」  買い物の途中でバッグから出た鍵のことを思い出した眞子は、そのことを管理人に尋ねた。鍵には1508と部屋の番号が書かれていたので、バッグに記されていた名前とともに管理人に聞くことにしたのだ。  中年の管理人話に飢えているのか、聞いた以上の事までベラベラと喋りはじめる。管理人として情報に通じているのはいいが、余計なことばかりを重ね連ねてくるので。 「死亡扱いってどうしてですか?あつかい扱い、って事は死んだ訳じゃないんですよね」  狂ったラジオの様に下世話な世間話を続ける、管理人にやや語気を強めて尋ねる。
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