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こうやってあたしの悔しさを表に引きずり出して、でも光は離そうとしない。 「名前くらい名乗ってよ。オレオレ詐欺かと思うわよ、しずき」 静かなる旗で、“しずき”と呼ぶ彼は、静かに降伏の白旗をあげずに、さらなる進軍を行う。 『なら、悠灯。俺の声がわからないのか?』 こう言われてしまうと、あたしは弱い。 この声をあたしが間違えるわけないのを、彼は知っている。 だから、彼に文句という名の返答を返したところで、あたしの言葉で傷つかない。 恋愛がどうのこうのと小難しく考えたところで、所詮はあたしはカゴノトリだと示すしかない。 籠の鳥とは、足を切られた鳥を指すだけではなく、逃げられないという意味で羽をもがれた飛べない鳥のことも指す。 あたしはどちらなのだろうか。
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