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「ぎぃやあぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
館中に響き渡る数人の悲鳴
当然、男の耳にもそれは入ってくる
しかし、今の彼は目の前に並べられたコインの虜となっているため気にも止められない
「うぎゃあぁぁぁぁ!」
「のわあぁぁぁぁぁ!」
「…坊っちゃま、あの連中はいかがなさいましょうか?」
「…ん?あぁ、いつものように金を奪って警察へ」
声をかけられ、かろうじて答えた様子だった
視線はコインから離れない
「かしこまりました」
モノクルをかけたスーツ姿の似合う初老の男が一礼をし、部屋を出ていく
広い部屋に男が一人残された
眼鏡の奥にある瞳の鋭さは一見して彼が切れ者であることを物語っている
しばらくして初老の男が部屋へと戻ってきた
「坊っちゃま、処理が終わりました」
「いつも早くて助かるよ。…で、何処の奴らだった?」
「恐らくですがホットウェル一味かと…」
男はチッと舌打ちをし、立ち上がった
「面倒な奴に目をつけられたな」
「コインシリーズ最後の一枚……欲しかったのは奴らも同じことだったのでしょう」
「爺、コイツらはしっかりと閉まっておいてくれ。もう僕の大事なコレクションだからね」
「かしこまりました。…して坊っちゃま、どちらへお出掛けで?」
男はドアの側に掛けられていた青いジャケットを羽織る
「仕事に決まってるだろう」
窓から差し込む月明かりが今日は一段と明るかった
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