依頼

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そこには宝がある そこには富がある そこには夢がある そこにはロマンがある そこは楽園だ そこを知るものは、皮肉を込めてこのように呼ぶ 【怪盗街】と 入ったら最後、命までをも盗られる……と噂されていたのはほんの数年前の話 一般人はなるべく近付かないようにしているが、それは目に見えて危ないと分かるような場所だけであり、今では怪盗街に出入りすることは珍しくもない この怪盗街、石を投げれば怪盗に当たると言われるように右も左も怪盗だらけだった しかし表立って行動を起こしたり、抗争を繰り広げることは少ない 【奪うやつは二流、盗んでこそ怪盗だ】 酒場でこれを聞かない日はないと言われるぐらい耳にする言葉 これが怪盗街に住む者なりのルールというものだった ルーノがこの怪盗街に来てもうすぐ一年になる 容姿端麗でありながら怪盗としての腕もあり、瞬く間にその名は広がった 「よう、ルーノの旦那ぁ!今日は何をお探しで?」 「あぁ、ちょっとピッキングツールが壊れてね。いいのあるかな?」 「任せて下さいよ!旦那には特別安くしておきますよ!」 「はは、ありがとう」 取り扱っている物にさえ目を閉じれば、なんら普通の店と変わらない雰囲気でルーノは買い物を済ませる 昼間は怪盗街という名からは想像もつかないぐらいに賑やかである
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