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とにかく彼には金が必要だった。
ローンの支払いはまだ数ヶ月はもつだろうが、
その頃には最早生活など不可能な状況に陥ることが明確だったし
数ヶ月もったところでローンが完済されるわけもなかったからだ。
それから1ヶ月前
かれはハローワークに通いつめ、求人雑誌に目を通し
久しく書いていなかった履歴書を数えきれないほど埋めつくし、面接を幾度となく受けたが
30代で大した資格もなく、実績もない彼を
率先して雇おうなどという奇特な企業には、ついに巡り会うことはなかった。
食費も交通費も切り詰め、疲労が全身から垂れ流されているのだから尚更ともいえた。
その日彼はいつも通り何の手応えもなく帰宅すると
パソコンに向かい求人サイトを巡り、また絶望を味わうと、適当にネットの海をさまよっていた。
「…ん?」
求人サイト、ニュースサイト、動画サイト、そしてエロサイトへ飛ぼうとリンクを探す中で
ふと何の気なしに開いた掲示板を流し読みしていると
彼の手が止まった。
「金のないやつちょっとこい…?」
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