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「良い守護霊じゃない?これから育てて行けば、立派なパートナーになれる素質があるわね」
そこまで言うと、式はいおりの金縛りを弱めてやる。
「あわわ…」
いおりの引きつったままだった顔は安堵の表情に変わり、力の抜けた体はフラッと後ろに倒れこむ。効果音はポテッ。
「…で、二つ目が肝心な話。洋司君、私達と一緒に活動する気は無い?」
式の言う活動…それは「サークル」と呼ばれる霊能者の集まりで、心霊事件の対処をメインに活動している組織だ。
「えと…すんません。僕はいおりちゃんの為だけに霊能者になりました。個人的に心霊事件に手を貸したりはしますが、組織として動くのはちょっと…」
いきなりの長ゼリフだが、このやりとりはもう五回目になるので、言い慣れてしまっているのが現状だ。
式は軽く微笑み、ふぅ…と息を吐く。
「やっぱりダメかぁ…てか慣れてるわねぇ、それ」
それ…つまり先ほどの長ゼリフ。二回目以降、一切セリフが変わっていない。
「いやぁ…すんません」
謝り癖のある洋司。すると、いおりが洋司の元に走ってきた。
「ようじぃ!…こわかったぁ!」
そう叫んで洋司に抱きつくいおり。先ほどのダッシュは助走のようだ。洋司もいおりをしっかり抱き止めて、怖かったよしよしなんて言ってるが…いおりは別に怯えて無かったりする。単に甘えたかっただけだ。
「…まだ話は終わって無いけど?」
式が声をかけると、洋司をいおりを抱いたまま答えた。
「あ、すんません。そろそろ学校なんで…」
別に時間を確かめた訳ではない。が、いくら早く起きたとはいえ、あれやこれやと話をしていれば時間も経つというもの。
洋司はいおりを床に降ろして、そそくさと用意を始めた。
学校へ向かう通学路。洋司は隣の少女へと問う。
「何で付いて来るんすか?」
「あのねぇ…まだ私の話は終わって無いし、学校に着くまでに話さないといけない事だし…」
呆れ混じりに答える少女。学校の制服ではなく、社会人風のスーツ(ピンク)を着ている。
「がっこうって、おもしろい?」
洋司の反対側にはいおり。かの少女が気に入らないようで、さりげなく話題を変えようとしてくる。
「あのね?いおりちゃんが学校で困らないように、転校手続きをしに行くのよ?」
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