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少女…もういいや、式としては仲良くしたいようで、いおりの助けにもなろうとしてくれるようである。しかし洋司は、その言葉に苦言を呈す。
「でもいおりちゃん、勉強ダメですよ?しかもこの見た目じゃ…」
いおりは首を傾げているが、六百年以上生きているのに周囲との交流がほとんど無かったせいか、いおりは頭が良く無かったりする。
「頭良く無いの…?」
式は意外だったようで、つい歩みを止めていおりを見つめる。
「なに?いおりはかしこいよ?」
…なるほど。確かに頭は良く無いようだ。
「じゃあ仕方ないわねぇ…。私が来た意味が無くなっちゃった」
と言いつつも、何だか楽しそうな式。
「?…まぁいいや。んじゃ、僕たちは行きますね」
立ち止まった式を置いて二人は歩き出す。式は二人を追いかけて…いおりの隣を歩き始めた。
(いおりちゃん?洋司君って頼れる人?)
魂に直接話しかける式。霊能者の基本的な技術の一つであり、洋司にそのやり取りは聞こえない。
(うん、とっても頼れるよ)
テレパシーのようなものなので、いおりからの返答もきびきびと聞こえる。
…そして、突然黙った二人に焦った洋司は…、
「いやぁ~、いい天気だなぁ~」
なんとか話題を作ろうとするが、反応が無いことに悲しみを感じるハメになった。
(ふーん…その体、不便でしょ?姿形を変えたら、あなただってもっとやりやすいでしょうに)
(確かに不便だけど、洋司はこのままが良いって言った。だから私は変えるつもりは無いよ)
(…ロリコン?)
洋司はロリコン扱いとなった。
そのまま二人は、式が所属する組織「サークル」のことやらいおりの過去話で盛り上がっていたのだが…何も聞こえない洋司にとっては、地獄の時間でしか無かった。
学校がそろそろ見えるぜってあたりで、式達は立ち止まって言った。
「洋司君、私たちの組織に入らない?」
「え?いや、だから…」
「ようじ、たすけてあげよう?」
「入ります!」
とりあえず、いおりを利用して洋司を仲間に引き込む作戦は上手くいったが…、
「そ、そう…」
何か釈然としないものを感じて、複雑な表情をする式。
「どう?」
勝ち誇った顔で聞いてくるいおりを見て…あぁそっか、と納得する。
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