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僕が最初にあの子を見たのは六歳の時、親に連れられて近所の寺に初詣に行った時だ。
まだ幼かった僕は、丁寧にお参りをする両親にイライラして、二人の目を盗んでそこから逃げ出したのだ。
逃げ出した…といっても、道を知っている訳ではない。僕はすぐに迷ってしまった。
「お父さん?お母さん?」
僕は適当に歩き回っているうちに迷子になり、寺の近くの竹林をさまようハメになってしまった。
「ここ…どこ?」
寂しさと冬の寒さが僕を襲う。僕は一体どうなってしまうんだろう?まだ「死」を知らなかった僕は、特に何といった感慨もなく、竹林に座り込んで寒さに耐えていた。
「…おとな、こわいの?」
僕が座り込んでから数分。何の前触れも無く、綺麗に透き通った声が聞こえてきた。
「誰…?」
立ち上がって見回して見ると、竹の一本に縋るように立っている、小さな、赤い着物を着た女の子がいた。
「わたしも、おとなこわい…」
でも当時の僕に、彼女の話を聞く余裕などなかった。
「お母さんとお父さんに会いたい…君は、道を知っているの?」
彼女が表情を曇らせた事にも気付けなかった。今思えば、あれは寂しい顔だったのかも知れない。
「こっち」
そう言って少女は歩き出す。僕は追いかけた。
「付いて行ったら、お母さんとお父さんに会えるの?」
竹林を迷わず進む少女から、返事は無い。
ふと気がつけば、寺の敷地の門前に二人はいた。
「わたし、いおり…またね」
一度だけ振り向いて、声だけを残して消えた少女。当時の僕は気付けなかったけど、竹林と寺は少し離れている。後で両親に話しても、嘘つき呼ばわりされるだけだった。
「いおりちゃん…ありがとう」
ちゃんと話も出来なかったけど、彼女は僕を助けてくれたのだ…また会えたらお礼を言おう、そう決めた。
次に会ったのは十二歳の時、はたまた舞台は初詣。小学校最後の思い出にと、クラスのみんなで初詣に行った時だ。
それまでも初詣の度に見掛けていたのだが、親にバレるのが怖くて声を掛けられなかった。
だから親抜き、子供同士の初詣で、絶対に声を掛けようって考えていた。
みんながお参りをしている間に、僕は辺りを見渡した。
「いた」
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