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「僕は何も知らなかったんだ!でも今は分かるよ…いおりちゃんの言ってた怖い大人って何なのか!」
「おとな、こわい…」
いおりちゃんが怖いと言っている大人、現代にそんな人間はもういない。
「今、怖い大人はいないんだ!変わったんだよ!」
「かわっ…た?」
「そう、だから出て来てくれ!謝らせてくれ!」
「……」
竹林の陰から出て来たいおりちゃんは、喋らない。僕はいおりちゃんに駆け寄った。
「本当に、ごめん…」
いおりちゃんを抱き締める。無いはずの実体に、確かな手応え。
「うん…わたしもごめんなさい。いま、おとなはこわくない」
いおりちゃんも、僕の背中に手を回す。届かないから結局、腰を抱えるような形にはなったけれど…お互いの気持ちは、深く深く伝わっていた。
そして、もうひとつ。僕はいおりちゃんに話があった。
「僕と、一緒に…色んな大人を見てみないか?」
「え?」
「竹林の陰からじゃなくて…僕の…守護霊として」
「しゅごれい…でも…」
「僕に、任せて」
「…うん…」
いおりちゃんの為にこの六年間、沢山の勉強をして来た。おばけの事、歴史の事、大人の事…それらは全て、今日この時から始まる、二人の世界の為に…。
「おきた?」
「おはよう、いおりちゃん」
「きょうも、がっこう?」
「あぁ、また大人見学するか?」
「うん、わたしはしゅごれい!」
「ハハハハ、ありがとうな」
かくして、いおりちゃんは僕の守護霊になった。幼い言葉使いは変わらないけど、いおりちゃんは一生懸命勉強してる。
「大人」って「怖い人」だけじゃないって、分かってくれたのかな…?
そう、信じている。
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