一…出会い

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「僕は何も知らなかったんだ!でも今は分かるよ…いおりちゃんの言ってた怖い大人って何なのか!」 「おとな、こわい…」  いおりちゃんが怖いと言っている大人、現代にそんな人間はもういない。 「今、怖い大人はいないんだ!変わったんだよ!」 「かわっ…た?」 「そう、だから出て来てくれ!謝らせてくれ!」 「……」  竹林の陰から出て来たいおりちゃんは、喋らない。僕はいおりちゃんに駆け寄った。 「本当に、ごめん…」  いおりちゃんを抱き締める。無いはずの実体に、確かな手応え。 「うん…わたしもごめんなさい。いま、おとなはこわくない」  いおりちゃんも、僕の背中に手を回す。届かないから結局、腰を抱えるような形にはなったけれど…お互いの気持ちは、深く深く伝わっていた。  そして、もうひとつ。僕はいおりちゃんに話があった。 「僕と、一緒に…色んな大人を見てみないか?」 「え?」 「竹林の陰からじゃなくて…僕の…守護霊として」 「しゅごれい…でも…」 「僕に、任せて」 「…うん…」  いおりちゃんの為にこの六年間、沢山の勉強をして来た。おばけの事、歴史の事、大人の事…それらは全て、今日この時から始まる、二人の世界の為に…。 「おきた?」 「おはよう、いおりちゃん」 「きょうも、がっこう?」 「あぁ、また大人見学するか?」 「うん、わたしはしゅごれい!」 「ハハハハ、ありがとうな」  かくして、いおりちゃんは僕の守護霊になった。幼い言葉使いは変わらないけど、いおりちゃんは一生懸命勉強してる。  「大人」って「怖い人」だけじゃないって、分かってくれたのかな…?  そう、信じている。
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