一…出会い

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 オマケ、いおりと神様と運命の話。  それはおよそ六百年前、いおりが死んで間もない頃。生前のいおりが最後に預けられていた古寺で、いおりそっくりの幽霊が出る…と話題になっていた。 「そう…わたしはおばけ」  いおりは怪談が大好きだった。特に死後の世界を扱う話が大好きで、親戚中をたらい回しにされている中での、唯一の楽しみでもあった。  いおりは想像の中でお化けを作ったり、怪談を作ったりして遊んでいたのだが…そのうちに、自分もそんな素敵な世界に生きたいと思うようになっていた。 「わたしは、『おてらのおばけ』」  かくしてそれは叶った。上手にお化けになる為の方法を考えて、自殺を図ったのだ。 「みんな、こわい、こわいって…たのしい…」  成功した理由なんてのは、単なる偶然が重なっただけなのだが…いおりにそんなことは想像も出来ない。そうして四十九日が経つまでの間、いおりは怪談「おてらのおばけ」として、自由に過ごしていたのだった。  いおりの死後四十九日。いおりの元に神様がやってきていた。 「かみさま、こんにちは」 「こんにちは…いおりちゃん、そろそろ行く時間だよ?」  四十九日…地上の霊が天に昇る日。いおりは分かってて行かなかったが為に、神様が直々に迎えに来たのだ。 「わたしは、いかない」 「ん?どうして?」 「しじゅうくにちは、『なながななかい』こないとだめ」 「そうだね、だから私が数えたよ?『七が七回』だろう?」 「ううん…私はおばけ」  神様が来る事は分かっていたいおり。そして神様が来た時用に、考えていた言い訳があった。 「わたしは『ろくのおばけ』。だから『なな』がこないの」  それは、言ってしまえば屁理屈だ。自分を「六のお化け」としてしまえば、「七」は来ない…そう考えたのだ。そんな屁理屈が通じるはずがない。そんな事を言っても、神様の怒りを買うだけだ…とは、話を聞いた少年の意見。  しかし神様は、面白そうに笑うとこう言った。 「ふぉっふぉっふぉっふぉ…『肋のお化け』か…だったら、ちゃんと『肋のお化け』らしく出来るのかな?」 「『ろくのおばけ』らしく?」 「『肋のお化け』じゃ無いなら、私と一緒に…」 「だいじょうぶ!ちゃんと『ろくのおばけ』らしくする!」 「なら、ずっとここにいる事を許してあげよう」 「ほ、ほんとに?」 「うむ」  
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