2人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
そして神様は帰って行った。いおりがその意味を理解出来たのは、それこそ六百余年経って初めて、この話を人に話した時であったのだが…。
「がんばる」
いおりは『ろくのおばけ』として、同時に『おてらのおばけ』として…お寺でひたすら六を数えるお化けになったのだった。
六百年が経って、いおりは初めて『肋のお化け』らしい事をした。
竹林で迷子になった少年を、助けてあげたのだ。いおりは最初、イタズラ心で少年を竹林に閉じ込めようとしていた…だが、彼の姿を見てドキッとしたいおりは、急に恥ずかしくなって、少年を竹林から出してしまった。…もう二度と会えない…そう思っていた。
神様はしっかり見ていた。彼女自身が名付けた『六のお化け』、そして自分が名付けた『肋のお化け』…その二つが、約束通りに果たされた。
「じゃ、ご褒美をあげよう」
神様は、毎年のように少年を同じ寺に初詣に連れて行ってやった。…だがいおりは、しっかりと『六のお化け』を守っていた。きっちり六年間、いおりは少年に会いに行かないのだ。
少年が十二歳の時、いおりとしよの間に溝が出来た。神様は焦った。ご褒美をあげるつもりが、とんだ不幸を招いてしまった。
そこで、神様は使いを遣わせた。少年の元に現れたその少女は、少年の心を立派に育て上げた。結果、いおりと少年は結ばれた。
その日、いおりの心は揺れていた、今日はあれから『六数えた年』なのだ。少年は大人になってしまった。まだ私に会いに来てくれるのだろうか?
二人は結ばれた。…いおりの願いと、神様の気まぐれと、運命の導き…それらはどういうわけか、少年…雛形洋司を中心に起きていたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!