二…廻り始めた世界

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 高校三年の三学期。  高校生活最後の学期に何を思うかは、人それぞれだろう。しかし、世界はそんな思いなどとは無関係に廻り続ける。  そんな世界の気まぐれに振り回されている少年が、またここに一人…。 「ど、どうしよう…」  三学期始業式の日の早朝、妙な胸騒ぎと共に目覚めた少年…雛形洋司は、傍らで眠る少女を見て焦っていた。  少女の名はいおり。洋司の先祖(の兄弟にあたるのだが、本人は分かっていない)の霊で、色々あった末に洋司の守護霊となった元「おてらのおばけ」。  …因みに、霊のくせに人に見えるわ物に触れるわ…勿論、力を使えば姿も消せるし飛べるのだけど…何もしてなかったらただの幼稚園児にしか見えない。  事実、子供の時分に死んだためか見た目だけじゃなく考え方も幼いのだが…またいずれ分かるので詳しくは割愛。  洋司は一人暮らし、両親からの仕送りで生活をしている。なので家にいる限りは何の問題もなく、愛し合う二人は幸せな時間を過ごしていたのだが…。 「今日から学校じゃねぇか…」  そう、洋司はまだ高校三年生。いくらいおりの為とはいえ、三学期の授業をまるまる欠席するのは非常にマズい。 「どうしよう…」  さて、ここで追記しておくと。  実は洋司が霊能力者だということは既に周知であり、今更霊の一体や二体が憑いていたって誰も気にしないのだ。 「どうしよう、どうしよう…」  が、寝起きの洋司の頭には、いおりを取るか自分の人生を取るかという不毛な悩みが渦巻いていた。…と、その時である。  コン、コン…。  窓ガラスをノックする音。洋司はハッと我に… 「だ、誰だ!」  帰ることもなく。慌てていおりを布団で隠してから、思いっきり怒鳴ってしまった。 「…洋司君?私よ私…」  窓の向こうの庭、怪訝そうな顔をして返事をするのは、少女…といってもいおりのような幼稚園児な少女ではなく、十九歳。 「うーん…ようじ、どうしたの?」  そして布団から漏れて来た澄んだ声、いおりだ。 「いおりちゃん!静かに!」  洋司は朝にとても弱い。珍しく早起きしたせいか、いつもより余計に暴走気味だ。 「はぁ…。本当にコイツは…」  先ほどの少女は、そんな洋司を見て呆れた様子でうなだれる。
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