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俺の部屋には虫が湧く。
無論、不潔にしているつもりはない。
しかしそいつらは悠々と俺の前を羽音も無く飛んでいく。
そいつらはあさ黒く、グロスがかかったようにてかりを帯びていて、その大きさは小指の爪を四等分したくらいに小さい。
そのくせ飛ぶのは遅い。どこへ行くでもなく、ゆっくりと縦横無尽に部屋を闊歩する。まさに悠々という表現が相応しい。
そいつらはいつも俺がひとりで呆けていると、どこからか湧いてくる。
わざわざ俺に見えるように目の前を飛んでいくのだ。
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