プロローグ

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 貴方は吸血鬼を見た事がありますか?  この問いにイエスと答えられる人間はこの世で何人いるだろう。  大体の予想で言えば一割弱程度、虚言や妄想を除けば、一割にも満たない――いや。ほぼ確実に、ゼロを記録するであろう事は、考えるまでも無く明確であると、私は思う。  吸血鬼とはそう言うものだ。  血を糧に、夜を跳梁跋扈する人外の存在。  太陽の光を浴びると灰になり、十字架で目を灼き、大蒜を苦手とし、河川を渡る事が出来ず、鏡に映らず、狼や蝙蝠へと変身し、血を吸うことで眷族を増やし、白木の杭を心臓に打ち込むか銀の武器を用いる事でしか殺せない不死の存在。  そんな、人の口端、フィクションの小説や映像でしか存在が認識できないものを、いったい誰が見た事があると言えるのか。  誰もが知識でしか知らない。誰もが想像でしか生み落とせない。  それが、吸血鬼。  だけど、私は知っている。  どうしようもなく奇想天外で、とんでもなく摩訶不思議で――だけど現実に確かな姿を描く、『吸血鬼』の名を冠した同級生の事を。  私は、知っている。
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