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ちらりと指輪から目を離しこちらを見た。
構えた銃の向こうに彼女を見る。
「………」
すっとソファから降り、こちらへと近づいてくる。
身構えるが、彼女が攻撃してくる気配はない。
彼女の色香が俺に通じないのは彼女も知っている。
何をする気だと構えた状態から睨みをきかせる。
俺から大体五歩手前で彼女は止まった。
「これは貴方にあげるわ」
指輪を指にはめたまま差し出してきた。
指は届かない。
「必死な貴方なんて似合わないし見たくないもの」
じっと見ていると、嘘じゃないわよ、と普段の彼女らしくない笑みを見せたので有難く頂くことにした。
本日活躍のない相棒を下げ、手を伸ばして指から指輪を抜き取った。
「その代わり、貸しよ」
そういうことは先に言え。
内心悪態を吐きつつ、指輪はしっかりと内ポケットに入れた。
「……しょうがない。覚えておく」
「ありがとう」
そのまま脇を通りすぎ、俺の壊した扉の下へと彼女は歩いて行った。
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