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朝、元樹は強烈に目を開けたくなかった。
いつもと硬さの違う枕と布団。
これらが昨日の一連のデキゴトが悪い夢でないことを物語っていた。
「ハァ。
もう覚悟決めなきゃな。
俺は変な村に辿り着き、早急に帰り方を模索し発見しなければならない。
これは事実……」
「変な村じゃないですよ」
目を開け起き上がり首を振り辺りを見渡すとそこには千代の姿があった。
「おはようございます。
昨晩はよく眠れましたか?
朝食の準備ができたので呼びに来ました」
少し尖った声で言う。
「ご、ごめん。
そ、そんなつもりはなかったんだ。
ハハハハハ……」
千代は元樹の言葉を全て聞かずに出て行った。
「……マズったな……。
後で謝っとくか……」
元樹は昨日も目覚めた小屋から出た。
その小屋は宴会の後千代に案内されたもので、レンガ作りの二階建て。
但し二階の屋根はない。
昨日の会話でその理由は教えてくれた。
回想。
『どうして、この家もあの家も屋根がないんだ?
雨なんか降ったらビチョビチョになるだろ』
大侍は高台の家に留守番で、元樹と千代の2人は松明を持たされ、昨日元樹が目覚めた空き小屋へ向かっていた。
『…………』
少し顔が陰ったのを元樹は見抜いていた。
『俺は雨は嫌いだなー。
ジメジメして、傘なんかもいるだろ?
学校に行くのにどんだけ苦労するか………』
千代の顔がそれこそ曇天、雨模様な顔を見て元樹はしまった、と思った。
『……あめ、ってどんな感じなのでしょうか……』
星一つすら見えない天井を見上げる。
『…………』
元樹は何て言ってあげればいいかわからなかった。
『……村にある本には書いてあるんです。雨も風も……』
それっきり2人は黙り続けた。
千代は最後に今日の朝ご飯に起こしに来ると言い残し、再び坂を登っていった。
回想終わり。
「俺、失言しかしてない気がする……。
今日は、上手く話そう」
元樹は高台の村長の家に向け歩き出した。
小屋の外は言われてみなければ朝とは分からないくらい暗かった。
しかし、昨日の日記に記されていた『穴』から日光が入り込み、『池』、今は湖と呼ぶべきサイズだが、に一筋の光が差し込んでいる景色は、雲の隙間から太陽の光線が注ぎ込む景色とも似ていたが。
『……俺もこんな景色今まで見たことがなかったよ……』
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