一方通行

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元樹たちが朝ご飯で使った料理を千代が洗っている間、大侍は言われた通り埃払いをしようと手当たり次第に、タンスの上やら鏡台の上やら触り散らしたが、どこも塵一つない。 どうやら既に掃除済みのようだ。 元樹はしっかりしてるなとまた感心した。 「さて、お皿洗いも終わりましたし、元樹さんどこ行きますか?」 「うーん、まず日記に書いてあったスポットを回ろう。 百聞は一見にしかずってね、もしかしたら何かわかるかもしれないし」 「……あのー、すぽっとって何ですか」 どうやら目標は達成されない。 元樹はそう確信した。 元樹と千代はひとまず話し合い行き先を水路に定めることにした。 理由は家から近い、高台にあるからだ。 高いところから低いところを見ていこう。 そういう作戦だった。 夏の朝だというのに体感では夕方位にホロ暗い道を歩いていくと、水辺に近づいたということを実感した。 「水の音が聞こえる」 「はい。水路はもうすぐです」 少し高い茂みを抜けると水路に行き当たった。 水路のすぐ向こう側は絶壁となってずっと天井に伸びている。 「これじゃ、ドームと言うよりも空き瓶の内側にいるみたいだな。 俺たちはボトルシップから落ちた乗組員じゃないんだぞ」 「……あの」 元樹はまた、やってしまったと思った。 直ぐに模範解答を用意する。 「ぼとるしっぷって何ですか?」 「ボトルシップって言うのはね、空き瓶の中で船を組み立てる遊びなんだよ。 ピンせっ……お箸みたいな道具を使ってね、蓋の方からお箸入れて糊でぱー……部品をくっつけるんだ。 それで瓶の中に船を作って完成」 元樹は非常に疲れた。 「どうやってその船を見るんですか?」 「エッ、透明のガラス瓶で作るから透けて見えるけど」 千代はそれこそガラス玉のように目をキラキラさせて言う。 「透けて見えるんですか? いいなー見てみたいなー。 この天井も透けて見えたらいいのに……」 そう言って真っ暗な天井を見上げる。 「ところで、詳しいですね。 そのぼとるしっぷ、作ったことあるんですか?」 元樹はフゥと息を吐き、千代と同じように天井を見上げた。 「兄貴がさ、昔そういうの好きだったんだよ。今はもう殆ど捨てちゃって残ってないんじゃないかなー」 「……仲よろしくないのですか?」 「……さぁ、どうだろね」
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