無代

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「妹は小さい頃から凄くイイ子だった。決して裕福ではないうちの家庭を、少しでも余裕を持たせようと10にも満たない内に、自ら働き手にまわり、遠くの国へ行ってしまった。それから10数年後、こんな形でお前に会うことになるなんて…だが、私は兄として、お前の想いを葬ろう。その怒りも、苛立ちも、表し様のない暗い気持ちも、この虚構の闇へと葬ろう。この埋葬者の手で。あぁ、忘れてしまえ、全て後片も残さず、消え去ってしまえ。私情など挟まない。後悔などしない。だからこの兄が、せめてお前を葬ろう。」そんな兄の手は白く光り輝き、美しく艶やかなその手が妹の顔を優しく撫でる。埋葬者の心に虚空の空間が生まれた
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