新しい土地に

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ここは彼が作り出した世界。埋葬者の利き手により葬った全ての記憶を具現化した、彼の右手の中の世界。この空間に立つ前、自らを葬った時点で、自分だけでなくこの世界ごと葬っていた。気付けば、あの美しく艶やかで真っ白だった埋葬者の利き手は、ドス黒く、深い闇のような酷く堕ちた手になっていた。しかし、彼が埋葬の闇に居た間、世界は周り出した。少しづつ修復され、故に、ここは新たに生まれた元とは違う世界。そして、あの枯れた花束や腐った果物は、埋葬した全ての物への自ら抱いていた労いの気の現れだと感じた。それはあまりにも残酷で、侮辱に等しい冷ややかな振る舞い。だが彼は気負いも後悔もしなかった。ただ、埋葬者の名を捨て、自ら最もらしい名、死神と名乗り、この空間を彷徨う事にした。この地に新たな生命が生まれるのを待ちながら…
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