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幸村の戸惑いも無視して政宗は待機していた小十郎に指示を出した。
小十郎も特に異論は唱えず、自らの式を促す。
「行け、貧狼(とんろう)」
式…貧狼は大きく咆哮すると問答無用で幸村にと飛び掛かった。
「そ、そんなぁっ??!!!」
幸村はあわてふためくも手にした槍で果敢に闘う。
そんな慌てぶりを笑いつつも、政宗の目は真剣だった。
政宗は有言実行なため、約束したことは必ず守る。
…それが小十郎は頼もしくも思い、怖くもあった。
小十郎を始めとする片倉一族は代々術師の家系だ。
神職から呪師まで、その範囲は広い。
小十郎はその中でも陰陽道を選び、今日まで政宗の右目として、陰陽師として仕えてきた。
最近の政宗は知らず知らずに自分を追い詰めている傾向が見られる。
それが気になり、式占を行えば不穏な兆候が見られた。
何か悪しきものが精神的にも肉体的にも追い詰めている…
だから、この幸村の申し出はとてもありがたく思っていた。
少しでも、気が紛れれば…、と。
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