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そして事件の現況である筋肉ババアだが、俺たちが遭遇したあの日を境に忽然と目撃情報が途絶えた。何度かまた張り込みもしてみたのだが、会うことは適わなかった。
「筋肉ババアは、草食系男子なんて言葉が流行る腑抜けた現代に喝を入れに現れた力の化身なのかもしれない」
そんな推測を真顔で述べる八村を、俺は軽く笑い飛ばした。それが本当なのだとしたら、あのお婆さんは今日もダンベル入り風呂敷を片手に何処かの街を練り歩いているのだろうか。
◎
「なぁなぁ」
事件も忘れ去られた某日。不気味な笑みを浮かべた八村が、机に突っ伏して寝ていた俺の顔を覗き込んできた。
「何だよ」
「お前知ってるか? 『筋肉ババアカスタム』の噂」
「カスタム!?」
くだらなくしょーもない俺たちの青春の二ページ目は、機会があればまた別の機会に。
了
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