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語尾を伸ばすな触るな俺に関わるなっ……!
心の中で悪態をついたが、それがこの女に伝わるわけもない。
人間関係を円滑にするため身につけた笑顔が、引きつりそうになるのを必死で堪える。
そんな時だった。
「圭!!」
廊下の向こうから、怒号が聞こえたのは。
振り返れば、ずっと探していた愛しい人が、もの凄い形相でずんずんこちらに近づいてきているのが見える。
「莉粋?」
何怒ってんだ?
と続くはずだった言葉は、莉粋に強く腕を引っ張られた拍子に喉の奥に引っ込んでしまった。
背は低いくせに、一応こいつも男なだけあって力はそこそこある。
とりあえず、俺は名前も知らない女の手から逃れられたことにほっとした。
同じ掴まれる状態でも、莉粋に対しては嫌悪感など微塵も感じなくても済む。むしろその逆だ。
そして、莉粋は突然のことでぽかんとしてる女をキッと睨み付けたかと思うと、俺の腕を掴んだまま廊下を歩き出した。
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