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引っ張られるがまま、連れてこられたのは屋上に続く階段の踊り場。
立ち入り禁止の屋上は扉に鍵がかかっているため、普段こんな場所に近寄る人間はいない。
昼休みだというのに人気は全くなく、生徒達の喧噪が随分と遠くに聞こえた。
「何してたの?」
ぱっと手を離し、こちらを振り返りもせずにそう言う莉粋の口調は、この上なく不機嫌なもので。
何怒ってんだコイツ? と思いながらも、俺は皮肉を込めた台詞を吐いてやった。
「何って……。購買にパン買いに行くっつって、迷って帰ってこれなくなった誰かさんを探してたんだけど。見てわかんなかった?」
すると、怒りっぽい莉粋は案の定ばっとこちらを振り向き、怒りを露わにまくし立てた。
「僕が言ってるのはそんな事じゃない! さっき圭が喋ってたのは誰かって訊いてるの!!」
本人としては威嚇しているつもりらしいが、頭半分はある身長差のためか、上目遣いで睨み付けられてもまったく恐くない。
むしろ拗ねてる子供みたいで可愛いとか思ってしまう俺は、やっぱりどうしようもない馬鹿のようだ。
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