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「う……わッ!?」
直後、唇に感じたのは柔らかい感触で、莉粋に唇を奪われたのだと気付く。
が、驚いたのも束の間、今度は口の端にピリリとした痛みが走った。
「痛……ッ」
呆気に取られているうちに莉粋はもう俺から離れていて、そのまま踵を返して走り出す。
数歩先で振り返ったかと思えば、べっと舌を出して。
「……け、圭が悪いんだからね!!」
上気させた顔のままで言い放ち、そのまま走り去ってしまった。
後に残された俺はしばらく呆然とするが、すぐにふっと笑みがこぼれる。
「……ああ、もう。逆効果だっつの」
呟きながら、俺は親指の腹で噛まれた口の端をすっと撫でた。
その後、闇雲に走り回ったあげく、またもや迷子になってしまった莉粋を俺が探しに行ったのは、言うまでもない。
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