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幼い頃から、自覚してたことがある。
どうやら僕は、重度の方向音痴らしい。
子供の頃から出かける度に迷子になっていたせいで、町内にいくつかある交番のお巡りさん達とは、みんな顔見知りになってしまった。
電話一本で探しに来てくれる人ができてからは、お巡りさんにお世話になることはなくなったけど、今でもこの悪い性質は治っていない。
土日の後の月曜日、2日ぶりに学校に行こうとしたら途中で迷ってしまうし、家から1キロも離れた場所に行けば、帰り方がわからなくなってしまう。
まぁ、これは母親からの遺伝だから、仕方がないと諦めた。
だけどそんな僕にもひとつだけ、自分の家から迷わずに行ける場所がある。
それは――。
「……莉粋? こんなとこで何してんだ?」
今、目の前でちょっと驚いた顔をしている、この人の家だ。
コンビニへでも行った帰りなのだろう、見覚えのあるロゴの入ったビニール袋を片手に提げていた。
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