Page.4 「Bitter or Sweet」

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     よくある休日の風景。  だけど今日は、ちょっと居心地が悪い。  というのも、今日僕の鞄の中には、ある物が入っているからだ。 「はぁ……。ちゃんと渡せるかな……」  不安になり、思わず溜め息混じりに呟いてしまう。  今日の日付は2月14日。  そう、言わずと知れたバレンタインデーだ。  やっぱり立場的には僕があげるもんなんだろうな、とか、思ってしまったわけで……。  けれどやっぱり、こんなことをするのは恥ずかしくてたまらない。  そんなことを考えていたら、彼がキッチンから戻ってきた。  両手に1つずつ持つマグカップからは、白い湯気が上がっていた。 「コーヒー。砂糖多めに入れといたから」 「……ありがとう」  彼は甘党な僕の好みを、よくわかってくれている。  受け取ったコーヒーに口を付けると、これでもかってくらい砂糖をとかされ、苦みの無くなった味が舌の上に広がった。  普通の人が飲めば、甘ったるいと言われるだろう。  だけど僕には丁度いい。 .
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