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「それにしても、来るなら連絡くらい入れろよな。行き違いになったらどうすんだ」
隣に座りながら、目線だけこちらに向けて言ってくる彼。
その仕草が流し目っぽくなっていて、どきりとした僕は思わず視線をそらしながら答えた。
「ケータイ……無くしたから」
これは事実。
これで道に迷ったりしたら、彼に電話もできないし、本当に家に帰れなくなるんだろうなとか考えたら、僕ってある意味かなりのケータイ依存だ。
「ふーん……」
興味なさそうに相づちを打ちながら、ズズッとコーヒーをすする。
ちなみに彼のはブラックだ。
よくあんな苦いだけのものが飲めるなぁ、とか考えてたら、彼は不意にカップをテーブルにコトリと置いた。
「……で? 今日の莉粋君は、どうしてそんなにそわそわしてるのかな?」
流石だと思った。鋭い。
彼はにやりと笑いながら、僕の顔を覗き込んでくる。
「そ、それは……」
頬が熱くなるのを感じて、僕はあさっての方向を向いた。
こんな顔を見られるわけにはいかない。
だけどそんな時、視界の端にある物が映った。
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